睡眠中、人は無意識に食いしばりや歯ぎしりをしています。自覚はなくとも歯のすり減りやヒビが入るなど、歯に大きな負担がかかります。
中にはエラが発達して徐々に顔貌が変化する重症例もあります。正式な病名は「睡眠時ブラキシズム」といいます。
さらに、症状が進み「顎関節」という耳の穴の前辺りある関節がカクカクと音がしたり、口全体が開きにくくなったり、顎などに痛みが生じるようになって、『顎関節症』として来院される方もいます。
また顎関節の不調が原因で、慢性頭痛やひどい肩こりなどの症状が現れる方もいらっしゃいます。
痛みや顎関節の動きの制限、違和感がある場合は早めに治療されたほうがよいでしょう。痛みが強い場合は消炎鎮痛剤も処方します。睡眠時に生じる場合は、バイトブロックと呼ばれるマウスピースをつけて寝ていただくと、歯の保護にもなります。
ただ、このマウスピースは違和感があり、鬱陶しいとか面倒だと言われる方もいますので、補助的な方法として、筋肉の働きを弱める、ボトックス注射による治療が有効です。
耳の前の頬骨(ほほぼね)から下顎角(エラの角)に向けて、ベルト状の「咬筋(こうきん)」という筋肉があります。その筋肉の下端にごく少量のボトックスを注射して、筋肉の動きを抑制します。
この治療を行うと、「非常に楽になった」「気にならなくなった」という感想をいただきます。
食いしばりや歯ぎしりは無意識のうちにおこるので、この治療法は不快な症状を和らげて、QOLも向上すると思います。
当クリニックで治療に使うボトックス注射剤は、厚生労働省の認可を受けた信頼性の高い薬剤で、顔面のしわ取りなどの美容治療に長年使用されているので安心です。
通常1度注射をして4か月間、経過を観察し、問題なければ再びボトックス治療を継続していきます。万一、体質に合わなければ、その時点で中止することもできます。
睡眠時に歯ぎしりや食いしばりをされている方は、短い時間の覚醒状態が続いてこのような症状が出ているものと思われ、睡眠の質は低下しています。
ボトックス治療をすることで、咬筋も力が抜けてバランスがとれ、睡眠自体の改善が図れると考えます。
「噛む」という行為は、毎日食事の度に必要な動きです。咬筋などの筋肉に過剰な負担がかかっていると、首や肩などの筋肉にも炎症が起きやすくなり、頭痛や肩こりなどを生むこともあります。
こうした自覚症状のある方はもちろん、睡眠時にご家族から歯ぎしりや食いしばりがあると言われている方、エラが硬く肥大していると感じる方、マウスピースやナイトガードが合わない方などは、アップルデンタルクリニックに一度ご相談ください。